日本は世界でも有数の地震大国でこれまでも多くの震災を経験してきました。未就学児を預かる保育施設も例外ではなく、その多くは、大規模災害時には近隣の学校や公園といった避難所への移動を想定しています。また、広い園庭といった外遊びの空間を持たない小規模な保育施設が増えつつある昨今、日常的にも「お散歩」として複数の幼児・児童を乗せ、近隣の公園などへの移動手段として大型の手押しカートが用いられています。しばしば幼児を含めた総重量が数十キロになる手押しカートを上り坂や細かい段差の耐えない路上で押すのは重労働であり、特に起伏の激しい地域では移動ルートや乗車人数が限られるなど、活動の制約になっています。災害避難で慣れない未舗装路であっても走行することもできる走破性と信頼性を備えることは、平時であっても保育士の負担を減らし、活動の幅を広げます。

経緯とその成果
緊急時に子供を守る上で保育士に無用な負担を抑えられる避難具であることを目指し、日頃から使い慣れること、そのために日常において使いやすく、自然と扱えることを狙ってデザインしました。大径輪を採用して砂利道など走破の難しい路面でもスムーズに通過できるようにしました。最も保育士に多い日本の成人女性の平均身長をもとに、モーションキャプチャを用いた動作解析を実施、筋骨格シミュレーションソフトで筋負担を推定し、最も負担の少ないハンドル高さを人間工学の観点から割り出しました。フレームの両サイドに視覚的にも安心感を訴えるクロスフレームを持つことでフレーム剛性を高め、押した力が無駄なく走行に繋がるようにしました。前後に着脱可能な大型バッグを備え、避難時に必要な着替えや携行品を保管することができます。外したバッグは単体でバックパックとして使用可能です。

https://www.g-mark.org/guide/2021/guide2.html